安全衛生ノート

〜脚立の安全対策(第1回)〜

平成26年5月

労働安全・衛生コンサルタント 土方伸一

脚立に起因する労働災害の分析(第1回)

このコーナーでは、労働災害の統計、災害発生の解析などに基づいて、問題点を明確にし、再発防止対策を検討していきたいと考えています。今月から、脚立に起因する災害を取り上げていきます。脚立は誰でも簡単に使える便利な道具ですが、死傷災害に結びつく危険な道具でもあります。第1回は災害事例と業種別発生状況について述べます。

◇災害事例 その1(資料出所:厚生労働省 平成22年死亡災害データベース)

自動車整備工場内の、高さ約3.5mの位置に設置されているコードリールに電気配線を取り付けるため、脚立をハシゴ状にして梁に立てかけ、高さ約1.7mの位置の踏さんに足をかけて作業していたところ、バランスを崩したか脚立の接地部が滑ったかにより、脚立とともに墜落し、頭部をコンクリート床面で打撲した。入院加療していたが、5日後に死亡した。

発生年月:平成22年3月         被災の程度:死亡                            業種:商業

災害の事例 その2(資料出所:東京労働局HP

高さ2.4mの脚立を用いて、高さ1.7mの踏さんに乗り、高さ3.3mの天井付近に固定された排水管を切断して、取外す作業を行っていたが、取外した排水管を床面に下ろすため、踏さんを一段降りた際に足を踏み外し、床面に墜落した。

発生年月:平成25年6月         被災の程度:死亡                            業種:建設業

◇脚立に起因する労働災害の統計(資料出所:厚生労働省 死亡災害・死傷災害データベース)

脚立に起因する墜落・転落災害を業種別にとりまとめました。建設業が最も多いのですが、商業など第三次産業において多発していることが判ります。次回は詳細な分析をしていきます。

死傷災害(平成22年)

 

死亡災害(平成20〜24年の合計)

業種

件数

割合

 

業種

件数

割合

建設業

228

36.1%

 

建設業

24

36.9%

製造業

93

14.7%

 

商業

10

15.4%

商業

93

14.7%

 

清掃・と畜業

7

10.8%

清掃・と畜業

53

8.4%

 

接客娯楽業

6

9.2%

運輸業

42

6.7%

 

製造業

5

7.7%

接客娯楽業

30

4.8%

 

農林業

4

6.2%

農林業

29

4.6%

 

教育研究業

3

4.6%

その他

63

10.0%

 

その他

6

9.2%

合計

631

100.0%

 

合計

65

100.0%

(注)死傷災害は平成22年の休業4日以上の労働災害のおよそ1/4を無作為抽出したものです。死亡災害は平成2024年の死亡災害全数を基にしており、両者の単純な比較はできません。